「初心忘るべからず」と「初心忘るるべからず」どっちも使える?|格言の周辺

   

世阿弥の有名な言葉「初心わするべからず」です。

年始に好きな格言としてもご紹介致しましたね。

知られている意味と世阿弥が伝えたかった意味とは

小学校6年生の時、校長先生に教えていただいたこの言葉は
人生観の形成に大きな影響がありました。

「初心わするべからず」

今回は以前より気になっていたこの言葉の表記のゆれについて。

校長先生が書かれていたのだから、間違いはないと思いますけれど。

 

「初心忘るべからず」と「初心忘るるべからず」どっちも使える?

 

初出は平安中期

「初心忘るべからず」の初出は世阿弥の「花鏡(かきょう)」(1424年)。

当初は漢文で表現されていました。

初心忘不可。

是非初心忘るべからずとは後略)

世阿弥「花鏡(かきょう)」より

  • 「忘る」は終止形「ワスル」
  • 「べし」は終止形に接続する助動詞。
平安時代当時の文法用語では「初心忘るべからず」となる。

やはり校長先生は正しかったのです。

口語の変遷

初心

その後口語での変化が出てきました。

  • 連体形が終止形を補う「ワスルル」の出現。
  • 新終止形「ワスレル」の出現

現在の私たちは終止形「ワスレル」を使っていますよね。

漢文の「忘るべからず」が、口語に引きずられて「忘れるべからず」と変化。

しかし、「忘れる」(口語)+「べからず」(文語)の連結には違和感があります。
そこで文語調の「忘るるべからず」と広まったのがないかとされています。

口に出してみるとわかるのですが、何か語感がいいですものね。

実際には「ワスルル」では変換が出てこないので、書く時には間違えにくいと思います。

会話の中では語感に引きずられて出てくることもあるでしょう。
そこで思い込んでしまうと書く時に迷ってしまいますよね。

格言は人の口を使って広まっていくものです。
世阿弥の言葉も、平安時代から現代までずっと使われている有名な言葉です。

それでこんな間違いも広まったのでしょうね。

結論!

初出をかんがみて「初心忘るべからず」が正しい。

初めて持った座右の銘でしたのでちょっとこだわって調べてみました。

好きな格言の周辺について不定期で語っています。

文章サポートライター梨理(りり)でした。

関連図書など

★ 世阿弥の「花鏡」を読むなら

風姿花伝・花鏡 (タチバナ教養文庫)

 

★ 「風姿花伝」のわかりやすい現代語訳

すらすら読める風姿花伝 (講談社+α文庫)

 

★ ご参考記事

”初心忘るべからず”-世阿弥の言葉より

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