古語と和歌|パラレルワールドがよみがえる本

   

今日ご紹介の本は、一見すると外国人研究者が見た平安文学(和歌)案内書に見えます。

新書なので教養的な軽い読み物と思って手にとると
ずっしりとした咀嚼を要する内容でした。

文章サポートライター梨理(りり)です。

こんなに深く、かつわかりやすい本が新書で手に入るなんて。
ありがたい世の中ですね。

それでは早速中身をご紹介していきましょう。

読書

「心づくしの日本語ー和歌でよむ古代の思想」ツベタナ・クリステワ 著

「心づくしの日本語: 和歌でよむ古代の思想 (ちくま新書)」

著者:ツベタナ・クリステワ
出版社: ちくま新書
出版年:2011年10月
分類:日本詩歌

個人的エッセンス 10

  1. 「竹取物語」は普遍的なおとぎ話の結末を逸脱している。
    日本文学はかぐや姫の失われた美を、言の葉を通して表現し続けたのではないか。
  2. 「古今集」の真名序に出てくる「言の葉」という表現。
    言の葉は木の葉に通じる。
    歌を詠むことは心を読むこと、自然なこと、生きる証。
  3. 平安時代の和歌は知的表現でありコミュニケーションの手段であった。
    現代の詩歌の位置にとどまらないもの。
  4. 「歌の様を知り、事の心を得たらむ人は、大空の月を見るがごとくに、古を仰ぎて、今を恋ひざらめからも」
    (「古今集」仮名序より 紀貫之)
  5. 老荘思想の「自然」の概念は、日本の「ものの本質を活かす」特徴に発展する。
  6. 古語の「曖昧」とは、乱れた心と迷いそのものを表していた。
  7. 「月やあらぬ 春や昔のはるならぬ 我が身ひとつは もとの身にして」
    (「古今集」・「伊勢物語」より 在原業平の歌)
  8. 日本語は音節言語で同音異義語が多いのが特徴。
    掛詞の想像力・パラレルワールド反対の意味を持つ。
    日本語の意味を正確に知るには文字が必要になる。
  9. 和歌の31文字の重奏性
  10. 日本語の「身」とは体であり私自身を表す。

読み終えて

著者はブルガリア出身の日本の古典研究者です。
現在は日本の大学で教えておられるようです。

最初の章から目が開かれていく爽快感を味わいます。

後半の章に進み、著者の論理もさらに冴えわたります。
日本語だけではなく、アラビア語やフロイトまで飛び出します。

源氏物語の藤壺の女御は、本当は光源氏のことをどう思ってたのか?
「疎まれぬ」の言葉が内包する意味。

著者の回答はぜひ直接お読みくださいね。

学生時代、もっと真剣に古文を学べば良かったと思ってしまいましたね。

現代語の前にあった古語の豊かさを感じ、プロローブからエピローグまで

心のルーツを外から開けてもらったような、まぶしさを感じる本でした。

平安文学や和歌に興味がある。
しかし古語が苦手、挫折してしまったという方にもお薦めの本です。

みな人の 心づくしに 和歌の浦を かきぞとどむる もじの関守(慈円の歌)

和歌は、人の心を奥底まで表現し、文字で書きとどめたものである)(著者の自由訳)

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