「蜂蜜と遠雷」-読書案内
自己啓発書・ビジネス書を読む時は、今必要なところすくい取るのが
速読のコツです。
文章サポートライター梨理です。
逆に、速読ではなかなかその世界を掴めないのが小説ですね。
長編小説を読むには、ある程度の基礎体力が要る様に思います。
本日ご紹介の小説は、2016年直木賞と2017年本屋大賞のダブル受賞作品なので、
小説好きな方には、既にご存知の本だと思います。
当サイトでは、あまり取り上げてこなかった系統の小説なので、
ご紹介させていただきますね。
「蜂蜜と遠雷」 恩田 陸 著
出版社:幻冬舎
分類:日本の小説
500ページを超える、重量感ある青春音楽小説です。
舞台は、とあるピアノコンクール、そこに挑戦する若者たちの群像劇で、
コンクールに参加している男女数人が主要人物となります。
クラシック音楽界の内幕や、作品世界の解説部分も面白いのは、
作者の音楽への深い理解と、綿密な取材があるのでしょう。
身体の内にあるのに、手に取って見せることはできない音楽を、
どう文章で説得してくのか、読み応えのある本でした。
ひとりの音楽愛好家として、心に響いた部分を取り上げてみました。
個人的エッセンス
世界中、どこに行っても、音楽は通じる。言葉の壁がない。
感動を共有することができる。
文学の世界にいる者からの言。
音楽や踊りは世界共通言語ですよね。
「そのことを聞きつけたメリナ・メルクーリが彼らに言うんだ。
『何言ってるの。鳥は楽譜なんか読めない。でも、決して歌うことを止めないわ。』
そうすると、音楽家たちは目を輝かせて、また、広場で演奏を始める」
最年長のコンクール出場者、明石の言葉より。
音楽は、特別な選ばれた人のものだけではないと、
思い出させてくれます。
これだけの広い裾野があって、みんなが自分も素晴らしい音楽を作り出したい、
もっと上手になりたい、ってもがき苦しんで自分の音楽を追求しているからこそ、
てっぺんにいる一握りの光を浴びてる音楽家の素晴らしさが余計際立つ。
「弾ける」のと「弾く」のとは似て非なるものであり、両者のあいだには深い溝がある、ー後略ー
プロとアマの音の違いは、そこに含まれる情報量の差だ。
一音一音にぎっしりと哲学や世界観のようなものが詰め込まれ、なおかつみずみずしい。
それらは固まっているのではなく、常に音の水面下ではマグマのように熱く流動的な想念が鼓動している。
音楽それ自体が有機体のように「生きて」いる。
音楽は全ての人のものであるからこそ、
高みに登った人への、尊敬のまなざしがあるのですね。
世界中にたった一人しかいなくても、野原にピアノが転がっていたら、
いつまでも引き続けていたいくらい好きだなぁ。
私たちが何を始めた時、どんな気持ちから始まったのでしょうか?
天才少年少女も、普通の大人も同じではないでしょうか。
読み終えて
物語も最後の方にさしかかると、少年の言動が、
あまりにも老成した大人の様に見える、と感じられるかもしれません。
ですが、凡人の理解の範疇を超えてくるのが、天才というもの。
コンクールの順位予想など気にならなくなる位、音楽描写が素晴らしく、
音楽の深淵をのぞかせてもらえる本です。
この書評は音楽を聴きながら執筆致しました。
読み終わったら、本の中に登場してくる、
作品音楽を聴きたくなること、請け合いです。
そちらのCDも、併せてご紹介しておきますね。
書誌データ
* 蜜蜂と遠雷
出版年:2016年9月
出版社:幻冬舎
分類:日本の小説
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