言語学から見た「日本人も悩む日本語」を読む
今日ご紹介の本は、よくある正しい日本語の本とは一味違う印象を持ちました。
まえがきで触れられていたそうそうたる名前。
三島由紀夫・谷崎潤一郎・川端康成・中村真一郎・丸谷才一・井上ひさし。
著名な作家たちのいわゆる文章指南の本。
文学を読み、綴る人なら読んでいるはずの本です。
作家の文章哲学を感じ取れる、これらの本はそれぞれに興味深いものでした。
ブログでは間違った言葉遣いをしないようにと、文芸的表現よりも日本語本の方を優先してしまいますね。
本書も日本語の使い方の本かと思って手にとりました。
違う角度から日本語が論じられていて面白かったですよ。
それでは早速、中身に入っていきましょう。
「日本人も悩む日本語」 加藤 重弘 著
個人的エッセンス 5
- 習慣的に長く使っていると一種の規範を持つようになる。
例:地名の川は河でなく川と表記が決まっている。 - 送り仮名の原理は、大原則でうまくいかなければ修正をかけるというもの。
文章を書く時に生じる問題を最小限度にする実用的なシステム。 - 元の世界観を知らないと誤用が生じる
例:油を売るとは、油を容器に移し替えている時にお客様と世間話をすること。
手持無沙汰な時間にならないように仕事していた、逆の意味だった。 - 語源は諸説の中のひとつとして理解する。
- 「お荷物のほう、お持ちします。」
「ほう」が気になる年長者もいるが文法的にはOK。
冗長であっても間違いではない。
直接的に言わず柔らかく配慮した上でのものいいからきている。
読み終えて
正解か不正かの答えに飛びつくやり方で、見落としがちなところに注目した本です。
よくある日本語本とは異なる視点と切り口で、大変面白かったですね。
驚いたのは「全然」について。
国語の時間に「全然」は否定文で使うのが正しいと習ったように思います。
「全然いい。」という使い方は、誤用だけど許されつつあると理解していました。
実は「全然」の後に肯定文がくるのは江戸時代からあった用法だそう。
あの夏目漱石も使っていたんだとか。
最近の「全然」は想定の否定を打ち消すために使うそうです。
そういえば、本人が否定したところに「全然大丈夫ですよ。」なんて使いますよね。
若者の優しい配慮から来ているという論に納得したのでした。
言葉の遣い方は正しい、正しくないと簡単に割りきれるものでもありません。
それは現実社会と同じで自律的に調整していく道を、と説く著者の言に感銘を受けました。
日本語を愛する人にはぜひ読んでいただきたい本です。
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